エルフの伝説 プロローグ
森深く、静寂に包まれたエルフの王国には、ふたりの姫がいました。
姉のアメリアは武術や剣の才能があり、一方、妹のシルフィーは希有な魔法の才能に恵まれていました。彼女たちの聖域は結界に護られており、その安寧は初代エルフ王の恵みと讃えられていました。
だが、平穏な日々は突如として打ち砕かれます。
守護の結界は破壊され、かつては遠ざけていた怪物たちが王国に侵入します。
不意を突かれたエルフたちは抵抗空しく、首都は手繰り寄せられました。
王は最後の一息まで戦い、その姿は暗闇に消えていきました。
悲しみにくれた妻、セラフィナ女王と二人の娘たちは、秘密の通路を通じて避難することを余儀なくされました。
だが、森の影へと身を隠そうとしたところ、怪物たちが立ちはだかります。
覚悟を決めた女王は囮となり、娘たちに逃げる時間を与えます。
そして、二人に魔法のティアラを託しました。
「今はその力を使えないかもしれない。だが、いつかあなたたちの力となる」と女王は告げました。
別れの抱擁の後、女王は姫たちを送り出し、涙で瞳を濡らしました。
姉妹は森を駆け抜けます。
泣きじゃくるシルフィーを背負ったアメリア。
だが、追いつめてくる怪物たちは容赦なく、逃げ場を奪います。
アメリアは剣を手に妹を護るも、数の圧倒的な不利に力を削がれていきました。
最後の力を振り絞りながら、アメリアはシルフィーを後ろに押し、自らが前に立ちました。
彼女の剣は闘志を込めて振り上げられ、眼前の敵に向けて突き進みました。
だが、力尽きた彼女の身体はもはや怪物の群れに抗することはできませんでした。
「私は…シルフィーを守りたい…」
その刹那、運命が動き始めます。アメリアの願いはティアラに届き、その中に眠る力が目覚めました。
彼女の体は光に包まれ、瞬く間に姿を消します。
その光は姉を捉え、そして、何もかもが静まり返りました。
驚くシルフィーの瞳に映るのは、そこにティアラだけが残っている光景でした。
妹の名を呼び続ける声は、ティアラから響いていました。
シルフィーはその声に応え、涙を流しながらティアラを手に取りました。
「お姉様…」
彼女の声は、森全体を駆け巡りました。
そして、その瞬間、ティアラは輝き、姉の力、姉の思いが光となって放たれ、怪物たちは退けられました。
アメリアの姿は無く、シルフィーだけが残されましたが、彼女は一人ではなかった。
シルフィーは涙をぬぐい、アメリアが残したティアラを高く掲げました。
彼女の瞳には新たな決意が燃え上がり、その力強い眼差しは、姉の意志を継ぐことを誓っていました。
アメリアが身を捧げた闘いはここから始まり、その物語は、エルフの王国に残された姫、シルフィーの手によって幕を開けることとなります。
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